気に入らない日本語

個人的に日本語としてどうしてもなじめない言い回しがいくつかある。

○○のそれ

この言い方が外国語の翻訳に由来することは一目瞭然。翻訳文でこれが出てきても抵抗があるのに日本人が日本語の文章でわざわざこれを使うのは日本語が不自由ですと自己紹介しているようなものだ。

これを好んで使う人はなんとなくそれっぽい文章を書こうとして使っていると思われる。外国の哲学書など権威のある文章の翻訳でこういう言い方が出てくるから(もちろんそれは翻訳者の技量が足りないんだけど)それが正しい言い方だと刷り込まれてしまったのだろう。

外国語から輸入された言い回しとか文の構造は数え切れないほどあって純粋に日本語的な文章というのは今の時代不可能になってしまったし、この記事の文章の中でもそういう類のものを無意識に使っているんだろうけども、「○○のそれ」という明らかに外国語の臭いぷんぷんの表現はどうがんばっても馴染めそうにない。

きわめて

本来は硬い文章で使われるのがお似合いだが、最近軽めの文章でも多用され下手をすると口頭でも使う人がいる。研究者とか学者気取りの人がよく使うイメージ。使われすぎて本来の意味よりも軽くなり「非常に」とか「とても」の言いかえになってしまっている。すなおに「非常に」「とても」「たいへん」といえばいい。

まるっと

おそらくどこかの方言だと思うが独特の響きが鼻につく。漢語由来の熟語とか造語、外来語のカタカナ表記のものは比較的すんなりと受け入れられるが、こういう日常語由来の言葉でしかも促音が含まれるものはなぜか抵抗がある。

前者・後者

これもおそらく日本語にもともとあったものではなく英語の翻訳文から広まった言い方だと思う。文章を書くときに硬い文章だろうが論理的な文章だろうが、この「前者・後者」を使わざるを得ないという場面はまずない。たいていはもっとわかりやすく言い換えることができる。

しかもすごく長くて複雑な文章を読んでいて急に「・・・このうち、前者は・・・」というのが出てくるといったん戻って何が前者で何が後者だったかもう一度確認する必要が出てきてしまうことがたまにある。

これをよく使う人からすれば何度も同じ言葉を繰り返したくない、あるいはこういう言い回しが論理的な文章なんだと思い込んでいるんだろうが、かえって読みにくい文章になっている例が多いように思う。

具体的に・・・

自然科学系の一般向けの読み物で多用されているイメージの言葉。近年使われすぎて食傷気味になった言葉の代表格。次のような使われ方をする。

「一般的に○○は××である。具体的な例を挙げると・・・」

これは「一般的に○○は××である。たとえば・・・」と言うほうがいい。「例」とか「たとえば」というのがすでに「具体的な」という意味を含んでいるからわざわざ「具体的な例」というのは冗長である。

ほかにも「具体的に言うと」とか「具体的には」というのがある。これも「詳しく言うと」とか「たとえば」などと言い換えたほうがいいものをよく見かける。